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かねてから市内小中学校の全教職員に向けた大規模仮想デスクトップ環境を整備し、教育現場の支援を行っている静岡県富士市(以下、富士市)。富士市は2016年秋にこの環境を刷新し、従来からの学校事務用途だけでなく、授業の中で動画や教育用コンテンツを生徒たちに見せられるよう、活用範囲をさらに広げました。
現在、小学校27校、中学校16校の教職員1,280名が、1人1台のノートPC型シンクライアント端末を校内外で活用しています。このシステム構築を担当したのは、パナソニック インフォメーションシステムズ(パナソニックIS)です。
静岡県富士市は、どこからでも富士山を仰ぎ見ることのできる自然と都市が共存する地域。
約26万人が暮らすこの市は教育の充実に注力していることでも知られており、2015年4月にオープンした教育複合施設「富士市教育プラザ」では、子どもの支援のほか、授業力やマネジメント力など教職員の専門性を高める研修も行われています。
先生にとってはたった1分でも貴重な時間。授業時間をムダにしないよう、パッと開いたらすぐ使えるようにしたい。
これまでは出席管理などの学校事務に利用されていたシンクライアント端末。 授業の中でも使えるようにしたい。
教育委員会が教育現場のニーズを吸い上げ、市役所がそれをシステムに落とし込むという二人三脚体制で進められている富士市の教職員向けPC環境整備事業。市内小中学校の全教職員がノートPC型シンクライアント端末を持ち運び、出席管理などの学校事務に利用しています。
2011年の第1期稼働から5年間、教育委員会では教職員へのヒアリングや研修会を実施しながらシステムの利用浸透に取り組んできました。そんな中で多く寄せられたのが“授業中の利用に関する要望”だったと富士市教育委員会 学校教育課 教育指導室主幹の佐野佐代子氏は振り返ります。「この事業の狙いは、教室での出席管理から自宅でのテレワークまで、端末をどこででも活用いただきたいというものです。ですが従来の環境だと、端末を一度閉じるとシャットダウンしてしまうなど、授業中の利用に支障が出るという声がありました。先生にとっては1分でも貴重な時間で、システムと現場との間にギャップが生じていたのです」。
また、従来用途である学校事務に加え、授業でもこの端末を活用し動画などを提示できるようにしたいというニーズもありました。システム開発担当である富士市 総務部 情報政策課 主幹の大長剛二氏は、「動画再生などの処理は仮想デスクトップでは本来不向きとされていますが、子どもたちに対し直接のメリットとなる“授業での活用”はぜひ実現したいところでした。ただし、システム更改にあたってはコスト面も無視できませんでした」と語ります。
こうしたご要望を受け、パナソニックISは「HPE Moonshot System」と「Citrix XenApp」によるソリューションをご提案しました。高性能なGPUを搭載した「HPE Moonshot System」でスムーズな動画再生を実現すると同時に、ライセンス形態を以前のVDI方式からSBC方式に転換し、コストダウンを図ったのです。
さらに実環境に近い形での事前検証を行い、パフォーマンスや挙動を確認。この結果から構築手順と運用手順を導き出しました。 こうして入札の結果、第1期での安定した運用実績も評価され、パナソニックISのご提案が採用されることとなったのです。
端末起動時間が1分以下になったうえ、厚さ・重量もともに30%減。 使いやすくなったおかげで利用率も向上した!
高性能なGPUを内蔵したサーバ「HPE Moonshot System」を採用したことで、仮想デスクトップでは不向きとされるマルチメディアコンテンツなどの利用もスムーズに実現。授業でも端末を活用できるようになった!
約3ヵ月の構築期間を経て、新システムがサービスインしたのは2016年の夏休み明けのこと。新しくなったシンクライアント端末が各学校へ配られると、教職員からは笑みがこぼれたといいます。 「以前の端末に比べると30%薄く軽くなり、かなり持ち運びやすくなった!という感想が数多く寄せられました。おかげで、日曜日のテレワーク利用者数が刷新前の300名から400名に増加するなど、利用率が向上しました。課題であった授業中の利用もスムーズになった上、起動時間も以前は2~3分掛かっていたものが50秒に短縮しました」(佐野氏)。 特にアクセスが集中する通知表の成績処理期間もシステムはパワフルに稼働し、トラブルは1件もなかったといいます。
授業用には、星空のシミュレーションや数学のグラフ作成など教室で活用できる学習支援ソフトを実装しました。「PC教室と同じソフトを使えるようになっており、各教室のプロジェクターに端末をつないで子どもたちに見せています。要望のあった動画はもちろん、先生自作のパワーポイント資料を使った授業も行われています」(大長氏)。 教育委員会では教員に端末を持参してもらい、端末の活用促進のための研修や、授業作りに関する講座を開催しているそう。「全小中学校の先生方が同じ環境を使っているから授業ノウハウの共有がしやすいという点は、大きなメリットなのでは」と大長氏は指摘します。
学校事務で取り扱うのは生徒の名簿や成績といった機微な情報。第三者の不正アクセスを遮断するため、システムは個体認証で許可された端末からしかログオンできないようになっています。また、万が一端末を紛失した場合でも、紛失した端末情報を報告すればその端末からのログオンを拒否することが可能です。 「端末はともかく、生徒にまつわる情報はお金に換えられませんので、データ流出を心配せず使ってもらえるというのは、先生にとっても我々システム担当にとっても負担が軽いですね」(大長氏)。
教職員向けシンクライアント端末が「もはや日々の業務に欠かせないもの」(佐野氏)となった今、次に整備したいのは子どもたちの環境だといいます。 「IT教育の機材は既に小中学校に入っていますが、今後はそのレベルをもっと高くしてあげないといけないと考えています。そのためにはまるでチョークを使うのと同じくらい自由かつ簡単に情報機器を扱えるよう、IT教育へのハードルを取り除くことが必要。パナソニックISは技術力の高さだけでなくパートナー各社との連携力や問題解決のスピードも優れているので、引き続き全体的にサポートしてもらえるとありがたいです」(大長氏)。
IDCサービス事業部 IDCソリューション部 文教・自治体インフラチーム 杉本 太郎 / 民間インフラチーム 金子 綾香 スムースに新システムへ移行し、安定稼働できていることは弊社だけでなく、富士市教育委員会様、富士市役所様のお力添えとパートナー各社のご尽力によるものです。今後も安定・快適な環境を継続できるようご支援させていただきたいと考えております。(杉本) お客様との信頼関係を築き上げながら一緒になって構築を進めた結果、お客様に喜んで頂け、導入を担当できたことを改めて嬉しく思います。今後も更なるご支援ができるよう努めてまいります。(金子)
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