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病院のニーズに合致したローコード開発のロボオペレータ
RPAにより、医療現場のDX・働き方改革を推進
ここがポイント |
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医療現場における課題
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このように解決
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積極的にDXに取り組んでいる社会福祉法人恩賜財団 済生会熊本病院では、働き方改革の推進を目指し、2020年にRPAを導入。
しかし高機能なあまり、忙しい業務の合間を縫ってのロボット作成は困難を極め、自動化は進みませんでした。
その後、ローコード開発のロボオペレータを導入したことで、課題だったロボット作成がスムーズに進められるように。
今回はロボオペレータの導入経緯、実際に作成したロボットとその効果など、RPA導入の勘所を伺いました。
――RPAの導入に至った背景をお聞かせください。
小妻氏 医療業界はDXが進まないと言われていますが、当院は院長が旗振り役となり、数年前から積極的にDXに取り組んでいます。RPAはその取り組みのひとつです。時間外労働の削減、業務の効率化など、医療業界における働き方改革について当院でも議論したところ、白羽の矢が立ったのがRPAでした。そこで2020年、取り引きのあったベンダーにRPAツールを選定していただきました。RPA以外にも、オンライン予約、オンライン面接、オンライン診療など、Webを中心に医療現場のDXを推進しています。
社会福祉法人恩賜財団 済生会熊本病院 医療情報部 医療情報調査分析室 室長 小妻 幸男 氏 |
――最初にRPAツールを導入した後、新たにロボオペレータを導入されていますが、何か課題を感じられたのでしょうか。
小妻氏 最初に導入したRPAツールはロジックを含め、かなり細かく設定できるツールでしたが、開発ステップ数の多さがネックでした。新規ロボット作成のハードルが高く、開発をベンダーに頼っていたのが正直なところでした。
この状況を踏まえ、改めて当院に合うRPAツールをリサーチしました。その過程でロボオペレータを含む2社のRPAツールが目に止まり、実際にデモ環境で利用させていただきながら比較・検討を行いました。
――最終的にロボオペレータを選定した理由をお聞かせください。
小妻氏 当院が最終的に重視したのは「ニーズに合っているかどうか」です。高機能さよりも、ロボットを手軽に作成できるRPAツールを求めました。それが当院にとってはロボオペレータでした。具体的な理由は以下の通りです。
<ローコード開発が可能>
視覚的な分かりやすさと使いやすさが特徴で、技術の取得と実装まで短時間でできるのがロボオペレータでした。ローコード開発のため、PCを扱えるリテラシーがあればロボットの作成は難しくないと感じました。
<低コストで導入できる>
やはり、安価で導入したいというのはあります。ロボオペレータはランニングコストを従来の約半分に抑えられる試算だったため、導入にあたってのハードルがありませんでした。
――これまで作成されたロボットを教えていただけますか。
山本氏 現在は、ロボオペレータで新規作成したロボットと、最初のRPAツールで作成した後、ロボオペレータに切り替えたロボットの2通りが稼働しています。具体的には以下の通りです。
社会福祉法人恩賜財団 済生会熊本病院 医療情報部 医療情報システム室 主任 山本 和弘 氏 |
<外出先の医師に手術予定表をメール>
当院のデータベースのなかには週単位の手術予定表があり、院内にいる場合はいつでも参照できます。しかし、外出先の場合、当直の医師に連絡をして確認するか、当院に来て手術予定表を確認するしかありませんでした。
「外出先からでも手軽に手術予定表を参照したい」との声が医師から寄せられていたため、手術予定表の画面をキャプチャして医師グループのアドレスにメール送信するロボットを作成しました。
<予防医療センターにおける健診予約の登録>
予防医療センターでは、企業などからの健診予約をシステムに登録する作業があります。年間にすると何万件というボリュームがあるため、職員の手作業だけでは負担が大き過ぎました。そこで、健診予約をシステムに登録する作業をロボットに置き換え。これにより、職員の負担を軽減するとともに、働き方改革にも貢献することができました。
<職員の体調分析表を所属長にメール送信>
コロナ禍においては、毎日、職員自身で体調を入力していました。そのデータは院内に公開されますが、各部門の所属長にはそのデータを集計・分析してメール送信する、という作業があります。この作業は、インターネットへつないでファイルをダウンロードするという手間がかかるもので、毎日、専任の職員が行っていました。作業の一部をロボットで行うようにしたため、専任である必要がなくなり、作業効率は大きく高まりました。
<リハビリテーション科の新規台帳作成>
リハビリテーション科では、患者様の記録情報を部門システムに入力する際、新規に台帳を起こします。この部分をロボットで自動化しました。
<リハビリテーション科の診療記録プリセット>
同じくリハビリテーション科では診療記録に関わるところの一部、基本的な疾患名やオーダーを出した医師名などの入力を自動化しました。法的な制約のため、最終的な確定は責任者が行わなければなりませんが、入力のプリセットと一時保存を自動化できたため、かなり作業時間を短縮することができました。
――RPA導入による定量的効果をお聞かせください。
小妻氏 まだまだ稼働しているロボットはわずかですが、図のような定量的効果を得ることができました。
小妻氏 RPAを導入して分かったことが2つあります。ひとつは、システム的には簡単でも、毎日、確実に誰がやらなければならない作業は、現場の負担になっているということです。ここにロボットを投入すれば、効率化が図れることを実感しました。
もうひとつは、すべて自動化する必要はないということ。例えばリハビリテーション科の診療記録の場合、最終的に責任者が入力を確定するということさえ遵守すれば、その前段階のプリセットはロボットに任せることができます。RPAにはまだまだ多くの活用方法があると確信しました。
―― RPA導入の啓発活動はどのようにして行っているのでしょうか。
小妻氏 そもそも医療業界は個人情報の取り扱いがセンシティブです。とくに診療記録に関わるところは、電子記録の3要件「真正性」「見読性」「保存性」を担保し、確実に記録として残すことが求められます。ですから、リハビリテーション科の診療記録もプリセットまでとしています。
とはいえ、院内にはいくつもの部門システムが稼働しており、効率化できるところは数多くあると思っています。現場でITリテラシーが高く、意識改革できる素養を持った方を見つけ、そういった方達に先導を切ってもらいながら、新しい発想でRPAを展開しています。今後も病院のDXを前向きに捉えてくれる方々とともに、少しずつRPAの輪を広げていければと考えています。
――あらためてロボオペレータに対する評価をお聞かせください。
益田氏 ロボオペレータを導入して感じるのは、視覚的な分かりやすさ、使い勝手の良さです。肌感覚ですが、半分や三分の一、極端に言えば五分の一の技術力でロボットを作成することができますから、技術の習得やロボットを作成するスピード感が違います。また、エンジニアの方とダイレクトに相談できるため、問い合わせに対するレスポンスが非常に早いと感じています。
社会福祉法人恩賜財団 済生会熊本病院 医療情報部 医療情報システム室 益田 達朗 氏 |
今後は、ヘルプ機能の更なる充実化やJavaScript等のコーディングへの対応、作成したロボットのドキュメント化が簡単にできる機能等の追加を期待しています。
――今後の展望とパナソニックISへの期待をお聞かせください。
小妻氏 今年度の計画では、既に着手済みのものを含め、新たに5つ以上の新規ロボットを開発し、稼働させることを目標にしています。
パナソニックISさんには、商品の販売に留まらず、社会的に貢献したいという気持ちを強く感じます。パナソニックグループが医療業界にサービスを提供することは、社会福祉・高齢化社会への貢献につながる、社会的意義のある活動だと感じます。
医療業界はDXがこれからという世界ですから、ぜひDXや働き方改革、ITリテラシー教育を推進していただきたいですね。そのためにまずは、ロボオペレータの普及に努めていただき、蓄積されたナレッジを当院に共有してもらえると助かります。今後とも、よろしくお願いいたします。
当社担当営業からひとこと
川本 清志 Kiyoshi Kawamoto
恩賜財団済生会熊本病院様と最初にお話しさせて頂いたのは、新型コロナウィルス感染が日本国内で最初に報告されて1年半経過している頃の、医療機関においては大変な時期でした。積極的にDXを推進されており、何かお役立ちできないかと考え、コロナ禍における働き方革新ソリューションをご紹介し、PC業務の自動化に繋がるロボオペレータをご採用頂きました。
今後も更に医療現場のDX推進をご支援できるよう、様々な情報をお届けして参ります。 |
取材︓2022年10月27日
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